正午

河沿いの、エアー ポケット、正午、 肩を、ならべ 路面電車の、軋みに 耳、すます 広場の、ベンチに 傾く、ひ、太古の アーカイブ きみを、待つ むぎわら帽子

ネグレスコ

きみの、たんじょうびに パンを、かう いろあせた、えいが ネグレスコと、あいさつ かわし、ダンスが はじまる、ひろばに たたずむ、ポローニア パンを、さがし あるく、きみの 視線のさきに、ネオンの ひかり、機械の きしみ、ここに きみと、ネグレスコ パ…

てまりうた

てまりつき こらと、うたう ひふみよ、いむな ひを、かぞえ なのか、かぞえて ひと、めぐり ななしの、うたを くりかえす きつねのこらに てをひかれ いむな、つかれて つくてまり ひふみよ、かぞえて なが、うたの ててなし、てまりに よいのほし

だんす

きみが、しんだひ おばけと、よむ はがき、あさ さいごの、ことばは あめりかん、よいどれ ねこ、せを あわせ、おかえり えきの、ほーむで みつめていた、おおきな やなぎ、はい はいいろに、ゆれ ゆらゆら、おおきな かげ、あめりかん だんす

しずむ、ひに

しずむ、ひに とぶ、うお ねむる、とうめいな ひふ、きみの 忘却を、いまも むかえ

てまりうた

みずに、むすばれ うまれぬもの、と うまれたもの、うき うずく、まり まひる、ひとの かた、はらに ゆれる、あおい おめだい、あら がうとき、かぞえ うた、きみと てまりつき、いつ いつ、つの うみへ、きみの ひと、ひとみに むすばれ

幻影2

流れると見えたものは そこにいすわった 退席をうながす 身振りの背後で むすばれた 雪の時間

幻影

流れすぎるものゆれる綿帽子 錆びた自転車のきしみ 川は流れるのをやめ 背を向けたみなもにくだける影に ぼくらは よりそった

時間

みなもに消える 声 記憶と忘却のあいだで 最後の日を 待ちながら

数え唄2

しろくろの スクリーン 和の差の あまりを にぎりしめ いすわりづつけた 歳月 一と〇のあいだで ためらいながら

数え歌

品川駅で きみと別れ せっちん通りを 歩いてゆく とよくにさまの サーカスに 揺れるオメダイ 耳塚にかけ あわふきむし 飛ばしてあそんだ 数え唄 やりてばばあの うすわらい モンゲが喰いたい サンタマリアに 祈りましょう きみの記憶に ジンタのリズム こう…

あじさい

あじさい、朝の おもさに、かたむく もうひとつの、時間スレートぶきの 屋根を、ささえ くりかえす、風景を めぐりここで、もう一度 雨にうたれて

明日

明けるものと 暮れるもの 似かよい寄り添う 二つの音叉光に、あらがい 流れとなって

マリオネット

マリオネット おもちゃの小舟 砂利のきしみ かくれんぼ凍える体重計に チェを吊るし シャッターを切るもう一度 同じ道をまわり 雪の重みを 計測する

鉄筒

壁に映写された 鉄筒 鉄筒を繋ぎ 打つ 十字架に 人の姿を 固定する 今朝も ベランダに出て 洗濯機を回す 揺れる 世界の周縁に ざわめきを 聴きながら

留守電

留守電に 残された風景 繰り返し 再生され 唐辛子の生える道 流れるしらべに 耳澄ます 無人の桟橋で 応答を待ち 河から河へ 機械が伝える記憶を 反復する 手と手を合わせ ワルツのように

ニコライ堂

ニコライ堂の夏 中古レコードで聴いた ジプシーの音楽 記憶をなくし 一人演じるテント芝居 南京虫に背中を喰われ 逃げ帰る カルパチアから 幡ヶ谷へ 疾走する馬の背に しがみつく盗賊 海へ漕ぎ出す チェラヴィエク 人間の 白楊の スナップショット ぼくが ぼ…

ひろう、ひと

あおい、ひかり ひろう、ひと つかれ、はまを さまよう、うみに いるわ、なみに ぬれ、ひそやかな いしの、ひびき かぜに、ふるえる ひとのかたちの りゅうぼく、そらに かいな、のばし ひろう、ゆれる ひかりに、ひらかれ そばにいるわ、あなたの かいな、…

ホンダワラ

山の小径を 発電所の跡地へ 草叢叩き、石叩き登る 落石で死んだ 宮大工の物語を 海鳴りに、聞きながら ノートいっぱいの 歌謡曲、繰り返す フレーズ、半透明の からだを、船底に 横たえ、歌う ホンダワラ とり違えられた、名を 反芻する

プロセルピーナ

石膏像の、幼い 眼差し、雨音に 寄り添い誰も知らない 町で、水に 書かれた、名を 探す (キミト ミミスマシ) 反復する、声 緑の、ざわめきに 消える、きみを 待つ、絵葉書 雨に濡れ 枯木のように、映画館の すみに、佇む神 ぼくらを拒む、夢に 舞う、フラミ…

ねこみち

さまよう、おおきな やなぎ、えきの ほうむから、ささやく あいさつする、だれも いない、しらない まちを、かぜに ふかれて、あるく まつみざか から、あわ しまへ、じゃずの ひびき、ねこみちを かけぬけ、なつに しんだ、きみの はぎしり、しなやかな う…

アッシジ

うんぶりあの さんだる、ひからび やぶれ、ねむる すずの、ね つえを つき、あおい ひかり、あつめ うたう さんだるを、ぬぎ きみと、おどる ゆれる、おめだい かたこんべに、ねむる うんぶりあの、ゆめ きみがさった あとの、いのりの ように

凧あげ

季節はずれの空に 凧をあげる 回る糸繰り車 往来する艀 版画に刻まれ 失効する遠近法 河は彎曲し 北へ向かう 石の重み 規則正しく引かれた 線から線へ さまよう時の 朱色に塗られた 平面に耐え 市場の喧騒 荷を運ぶ労夫と 戯れる女たち 岩壁沿いに走る列車 …

儀式

朝になるとぼくは 町家の狭い階段を上り 映画を撮る 洗濯物を干すきみの 横顔を重ね 壁に張られた紐の カーヴを記録する 切り取られたフレームの 均質な時間が ぼくらの儀式を 浸してゆく 引越しの朝 積まれてゆく段ボールの間で きみはやはり 洗濯物を干す …

お化け

海に浮かぶ小島 墓場の宿に お化けと泊まる 桜が散る夜 お化けはいつも そこにいて ぼくらの記憶を おかしくする 毎朝 ぼくらは船出する 桜の木の下に お化けを残して きみは空ばかり撮っている 虚ろに響くガイドの声 波の飛沫に霞む 赤い灯台 お化けと過ご…

広場

絵葉書のような広場 夜ごと聞こえる 声に導かれ 石の欄干で たわむれる影 河を渡り ぼくらは名前を 交換する 水面に映る きみの瞳 北をめざす 小さな小舟 待つものと 待たれるもの 絵葉書に刻まれた 幼い記憶に 耳を澄まして

アプラクサス

アプラクサスは待っている 夕暮れの広場のベンチで 通勤ラッシュのホームで 雪の公園で 息をひそめて 赤いちいさな自転車で 川辺を走るアプラクサス だれも聞かない きれぎれの歌 繰り返すフレーズが 水音のよう 土手に寝転び待っていた 赤いちいさな自転車…

始発列車

よあけに、 あるく、こぶち ふちのべ、テンポ ただしく、地図を なぞり、歩幅を はかり、無機質な 均整、始発列車に 留守電の、声 見しらぬ、きみの こぶち、ぼくの ふちのべ、けしきを 待つ、朝の 不在を、きき ながら、きき なが、き、ら きらら

コンイーチー

コンイーチー 幼い掌におかれた 紅豆 荷台に横たわり まどろむ男 散乱するガラス 白壁に光映え 疾走する人力車に よろめく老婆 かたわらで そっと 揺れるみなもを みつめている 藻に引かれるまま 耳澄まし 一粒の紅豆を ゆめみている 湖に 漕ぎ出した 車夫が…

ひうちいし

すなにうもれたこぶね きいろいはなにゆれ かぶくもののうたに みみすます いわかげに あかいさわがに すずめおうろうば はやすおさなご かねたたき いしたたき にごりがわのほとり まちつづける やわらぎの ひうちいし いよいよしろく はまをさまよい ふじ…