2008-01-01から1年間の記事一覧

『忠臣蔵』と『勧進帳』

歌舞伎の『勧進帳』は、都を追われた源義経一行が、東大寺勧進の山伏に変装し奥州平泉を目指す途中、安宅の関守・富樫左衛門に見咎められ、本物の山伏なら所持しているはずの勧進帳を見せろと迫られると、機転を利かした弁慶が、たまたま笈の中にあった巻物…

牧野省三

義太夫の母から義太夫節(浄瑠璃)を習い覚えた牧野省三は、それを声高に語りながら役者に演技をつけたといいます*1。例えば『本能寺合戦』では、 「程なく近付く鋲乗物。数多(あまた)の武士が前後をかこい」…ほらほら、そこで武士、駕籠に近づく、ええな……

『九ちゃんの刀を抜いて』

マキノの『九ちゃん刀を抜いて』の南田洋子はきれいだった。坂本九が「うるんだ眼」でやけに艶っぽいのに対して、南田演じる花魁は凛としていて…。中村八大の音楽もよかった。

『幽霊暁に死す』

マキノ正博の『幽霊暁に死す(生きてゐた幽霊)』は素晴らしかった。マキノが分身、コピー、贋作という映画的テーマにずっとこだわってきたことは、『鴛鴦歌合戦』、『弥次喜多道中記』、『忠臣蔵』、『侠骨一代』などからもわかるのですが、本作でも長谷川…

『トウキョウソナタ』

黒沢清の『トウキョウソナタ』は、相米慎二の『風花』のリメイクと言ったら言い過ぎかもしれないけれど、ずっと『風花』の小泉今日子が重なって見えました。ブレスレットの音が聞こえるかのよう…蘇生後の天女の舞(?)を、顔の表情と光のみで表現したのはさ…

ブルガリアン・ヴォイス

なつかしのブルガリアン・ヴォイス、http://jp.youtube.com/watch?v=GE2pzx6fa9s なんとなく『出草之歌』を思わせる。飛魚雲豹、加油!高金素梅、加油!

ジョニー・トゥ

ジョニー・トゥの新作『文雀』、『シェルブールの雨傘』を意識して撮ったというラスト、雨のスリ団対決シーンは最高!マカオを舞台にしたマカロニウェスタン『放・逐』冒頭の銃撃戦シーンも素晴らしい!

Nanwei Chin Su

『MON-ZEN』の監督ドリス・ドーリエの新作『花見』は未見だが(『東京物語』に触発された作品で、妻(ハンネローレ・エルスナー)に先立たれた夫が日本に来て舞踏に出会うらしい)、サントラはお薦め。Nanwei Chin Suの「竹田の子守唄」、渋さ知らズの「ひこ…

Thome

http://jp.youtube.com/watch?v=7HS9O5MXvyg ルドルフ・トーメ『見えるもの、見えないもの』スペイン版トレーラー。秋にはDVDも発売予定とか。

『インディア・ソング』

「音節を均等化し、故意の個人的効果はすべて除去することをめざす読書訓練を、君のモデルたちに課せ。 一律で規則的なものとなったテクスト。ほとんど感知しがたい減速と加速とによって、また、くすんだ声と艶のある声とによって獲得される、誰にも気づかれ…

ロベルト・ヴァルザー『白雪姫』

ロベルト・ヴァルザー『白雪姫』、フィクションの力のニーチェ的肯定。 「狩人:わたくしがあなた様を殺そうとしたなどと信じておいでなのですか? 白雪姫:はいと同時に、いいえと答えましょう。はいを絞め殺すと、即座にまたいいえがはいと申します。わた…

カネッティ『マラケシュの声』

「言語は何を覆っているのだろう?言語はわれわれから何を奪い去るのだろう?(…)私は音自身の欲するままに、音そのものによって掴まれたかった」と、マラケシュを旅したエリアス・カネッティは記しています。「アッラー!」という叫びを繰り返す盲目の乞食…

デリダ『言葉を撮る』

「先ほど私は言った、彼女は<役者>を、驚愕させる光のもとに、公的な場で彼を知っている人々、あるいは彼に接近する人々には知られざる光のもとに見せたと。実際にサファー・ファティは、(…)<役者>を逆光(contre-jour)のもと露出過剰にしたのである…

相米と藤沢秀行

碁の名誉棋聖・藤沢秀行と言えば、酒と女と博打に没頭してできた莫大な借金を棋聖戦六連覇の賞金で返済した天才無頼漢として有名ですが、相米慎二はこのシュウコウさんのドキュメンタリーを作りたいと百時間ほどカメラを回していたといいます。相米監督自身…

安吾と花田清輝

坂口安吾は、「FARCE」=「茶番」を芸術の最高位に置きました。それは「形が無い」けれども「感じられる世界」として「実在」する「強い現実」における芸術、つまり、「ファルスとは、最も微妙に、この人間の「観念」の中に踊りを踊る妖精」、「ここから先へ…

坂口安吾

坂口安吾は『日本文化私観』で小菅刑務所の建築と佃島のドライアイス工場と軍艦を、「直接心に突当り」、「僕の心をすぐ郷愁へ導いて行く」美しさをもつものとして挙げています。安吾によれば、それらが美しいのは、そこにただ「必要」からのみ生まれた「真…