『ざくろの色』

パラジャーノフの『ざくろの色』で繰り返し現れる球体の円運動と左右の振り子運動は、機織りで回転する紡錘と布を織る機の動きと思えます。つまり、この映画は、身体による三次元の演劇を、真正面からのショットによって、布に染められた模様という(マチス的)平面性へ還元しようとする試みと言えるでしょう。織られる布は、風に吹かれる書物の頁であり、古代アルメニアの長方形の墓石であり、映画のスクリーンそのものでもあるでしょう。その表面を流れる水は、染色を仕上げる水であり、スクリーン上の光と影の揺らぎをとも見えます。時間の流れに晒されてあるものを、布(あるいは頁、墓石)として織り上げ、永遠へともたらすこと。時間と永遠との間の往復、「抵抗」がこの映画を織りなしてゆきます。