『ゴーストダンス』

ケン・マクマレンの『ゴーストダンス』の中で、デリダパスカル・オジエと見つめ合い、監督の演出に従って次のような対話をしたそうです。「では、あなたはこれを信じますか、亡霊を信じますか」というデリダの問いに、彼女は短く、「ええ、今は、そうね」と答えます。数年後、デリダはテキサスで学生たちとこの映画を見直すことになります。その間にパスカル・オジエは死去していました。「スクリーンに突然パスカルの顔が浮かぶのをわたしは見ました。わたしはそれが死者の顔であることを知っているのです。彼女は、「亡霊を信じますか」とのわたしの質問に答えていました。ほぼわたしの眼を直視しながら、彼女はまたスクリーンからわたしにこう言うのです。「ええ、今は、そうね。」「今」とはいったいどの「今」でしょうか。数年後のテキサスでのことです。その時わたしは、彼女の幽霊が回帰するという、気が動転しそうな感情をもちました。彼女の幽霊の残像が戻ってきてわたしに、今ここのわたしに言う、「今…今…今、他なる大陸、他なる世界のこの暗い映画館の中で、そこ、今、そう、信じて、わたしは亡霊を信じるわ」と。」*1デリダにとって映画とは、時間の連続性に裂け目を入れる他者の幽霊的到来という出来事としてありました。幽霊としての他者に見つめられながら、わたしはそれと視線を交わすことができず、非対称的な関係にとどまらざるをえない。白い幽霊的なスクリーンから向けられるカメラ-アイ。

*1:『テレビのエコーグラフィー』191頁