『アウター・アンド・インナー・スペース』

ウォーホルの『アウター・アンド・インナー・スペース』(1965)では、二つの映写機で左右二つの画面に投影された二人のイーディ・セジウィックが、それぞれ左側に置かれたビデオモニターに横顔で映る過去の自分の映像と対面させられます。右画面のイーディは、ビデオの自分をあえて無視するかのように饒舌に喋り続け、左画面のイーディはビデオの自分にいらつき、神経質にたばこを吸いながら次第に不安に囚われてゆきます。二人のイーディが映像に対してまるで別人のように異なる反応を示す一方、映像のイーディは、モニターの中でときおりゴースト化しながら、同じ調子で喋り続けます。
ケン・マクマレンの『ゴーストダンス』(1983)で、デリダパスカル・オジエと向かい合い、「幽霊を信じますか」という彼女の問いに、答えています。*1数年後、デリダはテキサスで学生たちとこの映画を見直しますが、すでにパスカル・オジエは死去していました。その時の感覚をデリダはこう述べています。「スクリーンに突然パスカルの顔が浮かぶのをわたしは見ました。わたしはそれが死者の顔であることを知っているのです。彼女は、「亡霊を信じますか」とのわたしの質問に答えていました。ほぼわたしの眼を直視しながら、彼女はまたスクリーンからわたしにこう言うのです。「ええ、今は、そうね。」「今」とはいったいどの「今」でしょうか。数年後のテキサスでのことです。その時わたしは、彼女の幽霊が回帰するという、気が動転しそうな感情をもちました。」*2

*1:http://www.youtube.com/watch?v=0nmu3uwqzbI

*2:『テレビのエコーグラフィー』、191頁