ネストラー「大地の重み」

Yann Lardeauは、ペーター・ネストラー論"Le poids de la terre"で、ネストラー映画に画家Edouard Pignon との親近性を見てとり、ピニョンのこんな言葉を当てはめています。「私はしばしば抽象絵画を、大地の重みを忘れたものとして非難してきた。大地の重みとは、つまり何よりも様々な矛盾である。矛盾を抹消することで、彼らはドラマを抹消し、抽象絵画がしばしばその犠牲となる装飾芸術に陥る危険を生み出した。」ネストラー作品における「大地の重み」とは、例えば『ラインの流れ』冒頭の葡萄農夫、『子供の作文』におけるアルプスの山奥の小学生、『ノルトカロッテ』におけるラップランドの山の住民が暮らす、大地に根づいた閉ざされた空間を指します。ネストラー映画ではそこから、多くは水の流れとともに、いくつもの逃走線が引かれてゆく。この相反する運動からドラマが生まれ、映画に活力が与えられるというのが、ラルドー氏の考えのようです。*1

*1:CINEMA 014, Paris, automne 2007