お化け

海に浮かぶ小島
墓場の宿に
お化けと泊まる


桜が散る夜
お化けはいつも
そこにいて
ぼくらの記憶を
おかしくする


毎朝
ぼくらは船出する
桜の木の下に
お化けを残して
きみは空ばかり撮っている
虚ろに響くガイドの声
波の飛沫に霞む
赤い灯台


お化けと過ごした夜を思う
きみとぼくの間で
笑っていた
やさしい不在
いまもぼくらを待っている
あの島でも この島でも
繰り返される
旅の終わりに
たどりつくのは
同じ場所


桜の木の下で
待っている
きみの撮ったビデオに映る
お化けの泣き顔
空にはためく
白いスクリーン


明滅する灯台の向こうに
沈む夕日を
大きな瞳で
見つめている