凧あげ

季節はずれの空に
凧をあげる
回る糸繰り車
往来する艀
版画に刻まれ
失効する遠近法
河は彎曲し
北へ向かう


石の重み
規則正しく引かれた
線から線へ
さまよう時の
朱色に塗られた
平面に耐え


市場の喧騒
荷を運ぶ労夫と
戯れる女たち
岩壁沿いに走る列車
巨大なアーチを
風に抗い
渡る人影


氾濫する河が
すべてを洗い流すとき
ぼくらは小舟に乗り
また凧をあげる
水に映える光に眩暈し
糸の響きに耳を澄ます


空のスクリーンを
横切る小舟の
さざ波に震える
一筋の航跡が
ぼくらに伝える
その距離を
糸繰り車で
測りながら