ユダヤ性

エルンスト・ルビッチフリッツ・ラングフランツ・カフカヴァルター・ベンヤミンという20世紀の偉大なユダヤ人たちを継承するのは、今ではもうチェスの元世界チャンピオン、ボビー・フィッシャーくらいかもしれません。
自分を「最後のユダヤ知識人」と呼んだのは、パレスチナエドワード・サイードでした。佐藤真は、アイデンティティーの選択可能性と言います。ポルトガルの詩人ペソアが幾つもの名前を使い分けたように、ニーチェが「歴史上のすべての名前は私だ」と言うように、ゴダールの『新ドイツ零年』で「ひとつの形をもたない乙女たち」の反復回帰が語られるように、スクリーンに投射される幾つもの幽霊的イメージをそのつど「私」として生き、その点滅をメカスや宮澤賢治のように肯定してゆくこと。そんな映画的な生を、佐藤の新作は語ってくれるのではないかと期待しています。