ロメール

今日届いたcinema09号のおまけDVDには、エリック・ロメールのテレビ教育番組『マラルメとの対話』、『ヴィクトル・ユゴー:「観想」』、『建築家ヴィクトル・ユゴー』の3作が収録されていました。さっそく『マラルメ』を見たけれど、とても面白い。マラルメ役を演じてるのが、ジャン=ピエール・メルヴィルの『海の沈黙』のおじさん役ジャン=マリー・ロバン、もちろんマラルメ髭をつけているのでまったくわからないけど。左手に白い暖炉があり、奥の壁にエドゥアール・マネの『ステファヌ・マラルメの肖像』が掛けてあって、ちょうどその下に肖像と同じ黒い服を着てタバコを吸うマラルメが椅子に坐り、オフで語るインタビューアーの質問に答えています。そのインタビューの合間に、マラルメの詩のテクストが挿入され朗読されます。インタビューの前半は、生前のマラルメとジュール・ユレという人との対話にもとづいており、朗読もきれいでよいのですが、もっと面白いのはプレイヤード版全集に収録されているユレとの対話にない部分、つまり、映画の後半、マラルメがマネやオディロン・ルドンや詩を提示する仕方(活字の配置、余白)などについて語るところと思います。おそらく質問はロメールたちが考えて、それに合うマラルメの言葉を探してきたのでしょう。マネの絵が官展で拒否された時、ゾラとともに熱烈にマネを擁護したのがマラルメでした。ドビュッシーの「牧神の午後」が流れ、これにマネがつけた挿絵が何枚か映された後、マラルメの詩「牧神」のテクストに続いて「牧神の午後」の楽譜が映され、さらに、『オペラ座の仮面舞踏会』などマネの絵画についてのコメントが続きます。マネと並んでマラルメとの強い親近性が語られるのが、ルドンです。窓や切られた首のモチーフがマラルメと共通しているというコメントとともに、ゴヤフロベールの『聖アントワーヌの誘惑』をモチーフにしたルドンの版画が映され、いつか自分の詩のためにルドンに挿絵をつけてもらいたいか?という質問に、そういうこともあるかもしれないけど、自分は詩に挿絵をつけることには基本的に反対だなどとマラルメが答えています。マラルメとマネ、ルドンとの関連を強調して見せるところは、さすがロメールと思います。マネの名のもとにバタイユフーコーゴダールが結びつくと蓮実重彦は言っていましたが、ルドンの名のもとにマラルメベンヤミンロメールが結びつく!と言うのはちょっと苦しいでしょうか?