下北沢

現代思想」5月号が、失われたフォンタイーニャスについて語るペドロ・コスタのインタビューと都市計画で失われようとする下北沢を守る会“Save the 下北沢”の主張を並べているのを面白く読みました。高級住宅地に囲まれた下北沢を日本のフォンタイーニャスと呼ぶつもりはありませんが、松本零士の『聖凡人伝』みたいに失うもののなにもないフリーターたちが集う貧乏長屋的な雰囲気はどこかあったかもしれません。ジャズ喫茶「マサコ」の猫が死に、松田優作が“一度”来たのを誇りにしてた曲梶ばあさんの飲み屋「小千谷」が立ち退きで消え、大駱駝艦から分派した太陽神館の島田帝王とSKD出身の木村奈津が主宰していたダンススタジオが木村の死によって消え、下北沢はつねに失われつつある街だったかもしれません。ジャン=ピエール・リモザンの『Tokyo eyes』に映る“開かずの踏み切り”が、やがて貴重な記録映像として残るのでしょうか。