『オペレッタ狸御殿』

鈴木清順の『オペレッタ狸御殿』は、とても幸せな気持ちにしてくれる映画でした。木村威夫の左右対称に構成された幾何学的美術セット、本物なのにいつもながら人工的な美しさを湛えた桜、内田吐夢の『恋や恋なすな恋』を思わせる菜の花畑、パラジャーノフの『ざくろの色』を思わせる人物の動き、車輪の回転、振り子運動、美空ひばりのデジタル幽霊、狸姫と雨千代のゾンビのような接吻、『陽炎座』を思わせる子供たちの芝居、『夢二』の紙風船のような朝顔の飛ばし合い、中国語と日本語の響きの交叉…もしもダグラス・サークミュージカルを撮っていたらこれに近いものになったかもしれません。