『ミリオンダラー・ベイビー』

ミスティック・リバー』で罪と贖罪をテーマにした「カトリック的な」(もちろん良い意味で)作品を撮ったイーストウッドでしたが、新作『ミリオンダラー・ベイビー』は、テーマ的にはその延長にありながらも、ブッシュとカトリック教会が共同で反対キャンペーンをおこなったばかりの尊厳死をめぐって、自分の魂の救済よりも「娘」=マギーの尊厳を重んじるフランキーを描き、あっさりカトリック教会と袂を別ってしまいました(もちろん「タフなだけではだめだ!」と壁に書かれたフランキーのボクシング・ジムは、凍ったペットボトルを不思議そうに見つめるデンジャーのような社会的弱者を守る場所であり、フランキーの後をデンジャーが引き継いでゆくのもそのためです)。これからカトリック教会は、ブッシュのプロパガンダ映画『炎のメモリアル』やABCニュースに妖怪じみた姿を曝していないで、イーストウッド教皇に迎えるくらいでなくてはならないでしょう。