コスタ・小津・ターナー

「映画はドラマである、アクシデントではない」という小津安二郎の謎めいたフレーズから、「自分自身を切り取ってしまう花は自殺する」というジャック・ターナーのさらに謎めいた言葉を思い出したと言うペドロ・コスタ*1。「映画というのは世界を見せるためにあるのではない、ただ人々の眼差しを世界に集中させるためにあるのではないか」、「しかも人々の眼差しを真剣に、またより深く世界に集中するために、彼は映画を作るという使命感を持っていらしたのではないか」と、ここでコスタは小津について語っています。ターナーと小津という二人の「アルチザン」の映画は、見る者に何かが変だという違和感を抱かせ、映画の作り物性をレントゲンのように透かして見せます。その人工のフレームをとおしてはじめて、われわれは眼差しをより深く世界に集中することができるのでしょう。

*1:『国際シンポジウム 小津安二郎』、朝日新聞社、2004、260頁。