曲馬館・風の旅団

曲馬館のテント芝居の全国巡業を記録した布川徹郎の『風ッ喰らい時逆しま』を見て、80年代後半に八幡山で見た風の旅団の公演の記憶が甦り、曲馬館劇歌集『泪橋哀歌』と『オルケスタ・デル・ビエント〜風の旅団・劇中音楽集』にしばし聴き入ってしまいました。81年に活動停止した曲馬館の桜井大造らが82年に結成したのが風の旅団。山谷での越冬闘争や夏祭りで芝居を打ち、今はシェシズで活躍する小間慶大、西村卓也やシカラムータ大熊ワタルらミュージシャンが音楽を担当。当時の山谷の労働運動の記録映画『山谷〜やられたらやりかえせ』では佐藤満夫、後を継いだ山岡強一という二人の監督が右翼に殺されました。「風が 俺に 教えてくれた 開かずの 踏切りの 向こう側に 幻の街が あるんだと」という「泪橋哀歌」の踏み切り音で始り踏み切りの音で終わる曲馬館のアルバムでは、中野重治の「雨の品川駅」のとともに中原中也の「サーカス」が作曲され、唐十郎から桜井大造、『雪の断章』の相米慎二まで現代の大道芸人たちと中也の結びつきの強さをあらためて思いました。