マキノプロ女優・長谷川泰子

岩佐寿弥眠れ蜜』。夜の街角に立つ泰子、ショーウィンドウのマリオネット。突然歌いだすシャンソンがよかった。「地球が二つに割れればいい、/そして片方は洋行すればいい、/すれば私はもう片方に腰掛けて/青空をばかり―」
観念的無限状態(空)と何も考えないゼロ状態(身体)の両極に分裂したマリオネットとしての中也。「せめて死の時には、/あの女が私の上に胸を披いてくれるでせうか。/その時は白粧をつけてゐてはいや、/その時は白粧をつけてゐてはいや。//ただ静かにその胸を披いて、/私の眼に輻射しゐて下さい。/何にも考へてくれてはいや、/たとへ私のために考へてくれるのでもいや。」マゾの中也とサドの泰子。「此の世の果て」、京都。