いばら姫

 「いばら姫がいばらの垣のなかで眠っている。そして、これこれしかじかの年月が流れて、いばら姫は目を覚ます。
 けれども、ひとりの幸運な王子のキスによって目を覚ますのではない。
 料理番がいばら姫を起こした―つまり、料理番が下働きの小僧にびんたをくれてやったところ、その音が、かくも長き年月の蓄えおかれた力に反響して、城じゅうに鳴り響いた、そのときに。」*1

*1:ベンヤミン、『ドイツ悲劇の根源』の「序」、『ドイツ悲劇の根源』下(浅井健二郎訳、ちくま学芸文庫、1999)、183頁。