『火刑台上のジャンヌ・ダルク』

『火刑台上のジャンヌ・ダルク』では、豚の裁判長、羊の陪審判事、ロバの書記、カードゲーム化された戦、酒樽母さんに石臼おやじといったアレゴリー的形象によって演じられる個々の演劇シーンが、天使によって翻訳された本の頁として提示され、同時に天上から聖ドミニクとともにそれを観劇するジャンヌの反応が捉えられますが、やがて観劇を通じて自分の生の意味を理解したジャンヌ自身も、本の挿絵のように作り物性を強調されたその舞台の一部となり、いかにもお芝居じみた演技をしながら、キアロスタミの映画のラストのように、超ロングショットによって捉えられたひとつの点となって昇天します。ここでロッセリーニが、演劇シーンをロングショットで示し、螺旋状の天使の列に囲まれて昇天するジャンヌをひとつの点として、ほとんど抽象的な装飾画に還元して映し出すとき、キアロスタミにおいてと同様、「形姿」としての登場人物とともに書割の全体が、ベンヤミンが言うアレゴリー的な文字=記号として読解されるべきブレヒトバロック的演劇空間になっているようです。