『フォーエヴァー・モーツァルト』

たえざる中断とエピソード的シーンの連結、そして悲喜劇的な醒めた演技という叙事演劇的特徴を備えたゴダールの『フォーエヴァー・モーツァルト』は、マルローの『希望』のオーディションで連発されるノン、書店でマリヴォーを探すジェロームが発するノン、映画『宿命のボレロ』の撮影で女優のウイに対して何百回とダメ出しする監督のノン、そして、サラエヴォで捕虜となった若者たち上に降る砲弾の雨の死の響きの反復が重低音として流れながら、それに対してやはり何百回と発せられる女優のウイ、ラストで繰り返し中断されながら静かに鳴り響くモーツァルトの音楽、そして、「新しい頁を開いて」というソランジュ嬢の言葉に呼応してモーツァルトの楽譜が繰られ、そのかすかな音だけが暗転した画面から聞こえてくるエンドタイトルまで、「私が映画で好きなのは、説明不在の光に浴する壮麗な記号たちの飽和」というオリヴェイラの引用とともに暗示される『ノン、あるいは支配の空しい栄光』が提示するノンと、それへの応答としてゴダールが差し出すウイとの拮抗が奏でる音楽として構成されています。