「あの彼らの出会い」

ヴェネチアで特別賞を獲得したストローブ=ユイレの「あの彼らの出会い」(Quei loro incontri)は、「雲から抵抗へ」の第一部に使われたチェザーレ・パヴェーゼの「レウコとの対話」の最後の5つをテクストとしています。各章が二人の役者によって演じられ、最初の3つでは神々が、第4章では女神(ムネモシュネー)と人間(ヘシオドス)が、第5章では二人の人間が対話を交わします。水のせせらぎ、鳥のさえずりとともに響くイタリア語の朗読をとおして、神々との出会いという真理の経験を喪失した人間にとって、なお残されているのは物語ることであり、この物語るという能力は神々にとってさえ羨望の的となることが告げられます。これまでのどの作品にもまして、ここでは人間存在を肯定する力強さが言葉のリズムをとおして感じられ、パヴェーゼのテクストとヘルダーリンのテクストの親近性が示されています。体調不良のためヴェネチアに来られなかったというストローブ=ユイレが映画祭に送ったメッセージには、マルコ・ミュレールへの謝辞と「雲から抵抗へ」で用いられたパヴェーゼの引用とともにこう書かれています。「私はテロリストだ、フランコフォルティーニの文をもって私は皆さんに言いたい−アメリカ的帝国主義的資本主義が存在する限り、この世界にいくらテロリストがいても十分過ぎることはない。」