ベンヤミン『パリ―十九世紀の都市』

 ベンヤミンによれば、ひとつの時代の願望のイメージは、古びて過ぎ去ったばかりのものと自分を区別したいという欲求から、はるか昔に過ぎ去ったものへと赴きます。つまり、あらゆる時代は、それが見る夢の中で、自分の次の時代がイメージとなって現れるのを目の当たりにするけれど、この新しいものに触発されたイメージの空想力は、集団の無意識に貯蔵されている太古の無階級社会という原史と結びついて出現する。パサージュ、室内、博覧会場、パノラマなどは、この近代と原史の二義性が、弁証法の静止状態である夢のイメージとして現れたものです。あらゆる時代は次の時代を夢見るだけでなく、夢見ながら目覚めに向かって突き進んでゆくのだから、あらゆる時代はその終焉を自分のうちに含んでおり、この終焉を徐々に発現させます。だから、時代が見る夢の残滓は、歴史的な覚醒以前に、すでに廃墟としてあることになります。この夢と廃墟の結合は、アレゴリーと呼ばれます。ゴダールの「夢の形式」としての映画(『映画史』)において、それはモンタージュと呼ばれます。(ちくま学芸文庫ベンヤミン・コレクション①近代の意味』より)