尹東柱

茨木のり子が紹介して有名になった尹東柱の詩。
行こう行こう
追われる人のように行こう
白骨に知られず
美しいもうひとつの故郷へ行こう
「わたし」が故郷へ帰ると、「わたし」の白骨がついて来て、同じ部屋に横たわった。「わたし」は白骨をそこに残して、こっそりと、もうひとつの故郷へ行こうとする。とり残される「わたし」=白骨と、とり残す「わたし」との分裂が尹東柱の詩の力なのか。金時鐘訳では、「わたし」が白骨に向かって、一緒にもうひとつの故郷へ、こっそりと行こうと呼びかける解釈になっているのも面白い。独立運動の嫌疑で下鴨警察に逮捕された「空と風と星」の詩人は、1945年2月16日、独房で意味不明の叫び声を発し絶命したという。