石原吉郎

「ねむらねばならぬ 主体を喪失するために 喪失する主体をその瞬間にもつために その瞬間に一挙にもつために 瞬間の喪失のための瞬間の獲得 私が恒等式そのものとなるとき はじめて私は眠りに堕ちる その瞬間を瞬間としてもつために 眠る ひとつの意志で ねむる。」(石原吉郎「瞬間」、詩集〈北條〉より)
意志として「ねむる」ことと、主体を喪失して「眠る」ことが等号で結ばれる、「私」がそのような「恒等式そのものと」となる「瞬間」から繰り返し出発するために、「ねむり」と「めざめ」の間を詩人は往復する。