船出

真夜中の桟橋から
船出する
乗船名簿に
ぼくらの名を
書きしるして


水のように
繰り返される名前
不在のまま名指され
誰でもない者として
待ちつづける


船室の窓から
波間に浮かぶブイを眺めていた
見知らぬ乗客たちと
薄明の港をめざして


日を数え
物語を数え
また船出する
真夜中の桟橋から
ぼくらを待つ
無数の名前とともに