2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『Fフォー・フェイク』

『Vフォー・ヴェンデッタ』とのタイトルからもわかるように、この作品はウェルズの『Fフォー・フェイク』へのオマージュとなっています。ヒロイン、エヴィーの父の言葉として語られる「作家は真実を語るために嘘をつく」は、『フェイク』のラストのセリフ…

『Vフォー・ヴェンデッタ』

ジェームズ・マクティーグの『Vフォー・ヴェンデッタ』は、テロの脅威を理由に生活の隅々まで監視し、メディアによる情報操作をとおして国民を手なずけようとする現在のアメリカや日本のような国家権力への批判となっています。すでにアメリカは自ら引き起…

『イッツ・オール・トゥルー』

オーソン・ウェルズの未完の企画『イッツ・オール・トゥルー』中の「いかだの四人」のエピソードは、ブラジルの貧しい漁村から四人の男が社会保障を求めてリオ・デジャネイロまで航海するいかだの帆となる白布にまずサン・ペドロという船名が書き込まれるシ…

『メシア』

ロッセリーニの『メシア』は、後期の特徴であるズームによって遠方から役者にそれと気づかせないまま顔のアップを撮影する手法を用いながら、ロングショットで捉えられる民衆の中の一人としてのキリストに焦点が当てられています。ゆるやかな移動撮影が捉え…

ムージルの映画論

ローベルト・ムージルは「新しい美学へのきざし」としての映画を論じたエッセー*1で、映画においてはすべての事物が「観相学的印象」あるいは「象徴的相貌」を与えられるというベラ・バラージュのテーゼを取り上げながら、「世界は物と物からなる関係として…

『言葉とユートピア』

ルイス・ミゲル・シントラ演じる壮年のヴェイラ神父が、布教の武器としての音楽と言葉をダビデの竪琴と投石器に喩えるおそらくこの映画中で最も美しい説教の最中に一瞬イタリア語を間違え、スウェーデン女王の失笑を買うとすかさず、「すべての言語を操る者…

『心のともしび』

ダグラス・サークは『心のともしび』についてこう語っています。「私のいちばんお気に入りの企画は、盲人の家に映画セットを作ることでした。たえずあたりを叩き、眼に見えない物を掴もうとする人々だけがそこにはいたでしょう。ここで私がじつに面白いと思…